謝辞
月配列って何ですか?
一度は規格化されたものの、使用実績が無いため廃されたJISX6004(通称、新JIS配列)を元に、2chの方々が中指シフト化したものです。代表的な2-263をはじめとして、たくさんの私家版が存在します。
通常キーボードに刻印されているJISX6002(通称、JISかな配列)では、キーボード一面全てにかなが振られています。新JIS配列では、英字同様にアルファベットの範囲にしかかなが振られていません。その代わり、ひとつのキーにふたつの文字が対応していて、シフトキーで打ち分けます。
この方式は、必然的にシフトキーをどのキーよりも多用することになります。月配列では、従来小指が担当していたシフトキーを文字領域に持ち込んで、中指担当キーによるプレフィックスとしています。
詳しくは中指前置シフト新JIS「月配列」をお読みください。
月配列ってどんなところが良いの?
もともとの新JIS配列が、かなり優れた配列であることが、そのまま月配列の最大の利点です。
3段2面という設計方針は、数字や記号がモードの切り替え無しでそのまま使えることを意味します。
また、その上に並べられたかなも、利用頻度や文字ごとの連なり方、使われ方が考慮された、数々の新配列がネット上で発表されるようになった今から見てもなお、とても優れた配置となっています。
では、何故にそこまで優れた新JIS配列をそのまま使わずに、面選択方式をシフトキーから文字キーによるプレフィクスへと変更して、月配列として使うのでしょうか。*1
シフトキーは、英文であれば文頭や名詞だけでしか使わなくていいものです。それを、種類にして半分の、しかも文章中どこにでも現れるかな(使用頻度は全体の1/4ぐらい)に使うのは、かなり煩わしいものです。左右のシフトキーですと、毎回、手首を動かさないといけません。特に、日本語キーボードですと右手側のシフトキーは英語キーボードに比べ1キー分遠いですからね。
それを、5本の指のうち、最も酷使に耐えられる中指を使う、キーボードの真ん中へと移動してくるのは、妥当な選択ではないでしょうか?
また、シフトキーを使う場合は、通常、同時押しとなりますが、月配列がこれを文字キーと同じ扱いのプレフィクスとしたことは、シフトキーを押しつづけなくても良い、シフトキーを離すタイミングを考えなくても良い、など、ローマ字と同じ打ち方が通用することも意味します。)そのような方には、同時押しの方が適しているようです。*2
なお、新JIS配列を使用するときは、他にも、スペースキーをシフトキー兼用とする、所謂SandSを用いる選択肢も存在します。
月配列に欠点はないの?
新JIS配列と比較しますと、ど真ん中のもっとも打ち易いキーをプレフィクスに取られますので、使用頻度の高いかながその分他のキーへと移されてしまっています。また、シフトキーであれば、「裏面」の文字を連続で入力する時は押しっぱなしで構わないわけで、実際、新JIS配列の裏面はそれを考慮した並びになっています。それを、月配列ではプレフィックスシフト化して用いるわけですから、ここでも若干の無理と無駄が生じています。ただし、シフトキーを使うことによりホームポジションから指が離れてしまうこと、及び、同時押しから開放されるため、実際には悪化以上のメリットがあると考えられます。これは絶対的な価値観ではなく、月のやり方が気に入った人だけ使えばいい類のものです。好みや合う合わないの問題もありますし、実際私自身、新JISは新JISで好きですので。
それ以外の配列については、他方式との比較をご覧ください。
ローマ字入力と比較しますと、数値上では月配列は優勢ですし、ローマ字入力はものすごく指の使用頻度が偏っています。ローマ字入力で長文を打った後は、右手の人差し指や、左手の小指が痛くなっている人が多いと思います。ただし、QWERTY配列上のローマ字入力は、ほぼキーボード下段を使用せず、2段だけで打てる、使用範囲の狭い入力方式です。Dvorak配列上のローマ字入力は、母音と子音が左右に分かれており、交互に打てる入力方式です。こうしたローマ字入力の特徴は、素早く続けてキーを入力することを可能にします。同じ手で、薬指で下の段を打った後に小指で上の段を打つような、無理な体勢*3が起きません。結果、打っていて気持ちのいい入力方式です。また、PCを使用していますと、URLやメールアドレス、会社名等で、アルファベットの羅列としてのローマ字を入力するシーンが多々あります。ローマ字入力に慣れているかどうかの違いは大きいです。ローマ字は欠陥の多い入力方式ですが、長所もあり、それは否定できるものではありません。
TRON、NICOLA、または飛鳥や小梅など、親指を左右別々のシフトに用いる配列は、また全然別の長所と短所があります。親指を使いますし、ひとつのキーに3つのかなが割り当てられます。*4私自身に使用経験がほとんどないため評は避けますが、ひとつだけ書いておくと、親指シフト専用のキーボードも存在しますが、最近は変換/無変換キーを使うようです。英語キーボードを使うのであれば、これらの配列は使用できないことになります。
月配列(Yx版)って何ですか?
数多の月配列の私家版のうち、最もマイナーなものです。利用者は私だけあり、私の気分次第で改訂されます。そのため、お薦めはしません。
じゃあなんでこんなページ作ってんだといいますと……自分で言うのもなんですが、Yxは随分迷走してまして、いろんなことを試しています。ですから……単に記録を残しておきたかっただけです。このページに辿りついた人には本当にごめんなさい。
月配列Yx/Next Stage 2
現時点で割と長く持っているバージョンです。
表面。
せ | け | ☆ | て | ょ | つ | ん | ☆ | り | 半 | |
は | か | し | と | た | く | う | い | 濁 | な | ー |
す | こ | に | さ | そ | っ | る | き | み | ち |
裏面。
! | 、 | 。 | ? | |||||||
ぁ | ほ | れ | ふ | め | む | え | も | を | ぬ | |
ぃ | の | ら | ゅ | よ | ひ | お | ま | わ | あ | ’ |
へ | ぇ | ぉ | ね | ゃ | □ | ろ | ゆ | や | ぅ |
句読点は数字段の裏です。
月配列Yx/Chasse-neige
CapsLock使用の最終バージョンです。
表面。
せ | け | ★ | て | ょ | つ | ん | ☆ | な | 半 | 「 | 」 | |
を | は | か | し | と | た | く | う | い | 濁 | れ | ー | |
す | こ | に | さ | そ | っ | る | き | あ | ち |
「を」はCaps Lockを使用します。鍵括弧は英語キーボードの[]に準拠します。日本語キーボードを使用する場合は、縦位置に並べ、また@や_の位置にもなにかを配置すると良いと思われます。
裏面。
ぁ | ほ | り | ふ | め | む | え | ま | わ | ぬ | 「 | 」 | |
英 | ぃ | の | ら | ゅ | よ | ひ | お | も | み | や | ’ | |
へ | ぇ | ぉ | ね | ゃ | ゆ | ろ | 、 | 。 | ぅ |
以下はオプションです。
シフトキーを使用する面。
、 | 。 | ~ | { | } | ||||||||
! | ・ | ー | : | ” | ||||||||
< | > | ? |
Ux版のパクリ方式の句読点。
- ☆→スペース「、」
- ★→スペース「。」
月配列を名乗る配列の中でのYxの特徴をざっと書きます。
- 英語キーボード上で実現できるよう、右手小指の外はシングルクォーテーションしか使用しません。
- 通常、中指プレフィクスにはDKを使いますが、YxはEIを使います。下から上のほうが打ち易いのと、「どうやら配列なんか意識して無い人がぱっと見まん中のキーで思いつくのは上段のEIのほうらしい理論」に則っています。
- JISかな配列使いは右手小指が強い!しかしローマ字使いは弱い!頻度を下げる。
- それに限らず、多くの配列が、右利きは右手が強いとばかりに右手を多く使う分布を取っているのに対し、Yxは、左右同じぐらい、少し左手が多いかなというぐらいにしています。右手にはカーソルキーもマウスもペンもおやつもありますしね。
- 「の」が裏面にあるため打鍵数では不利になっていますが、それと引き換えに新JIS配列では右手小指の外側、月配列では通常Vに置かれ不遇だった「な」をO位置に置くことができています。
- 2-263よりも新JISに近い配置となっています。
- VB,NMを打ち間違えるキー、右手の薬指と小指の下段を指にダメージが行くキーと考えています。考えているだけで配列には反映されて無いどころか悪化してます。
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20060609 ← 今となっては忘却の彼方にある初期コンセプト
打鍵数は本当に少ないの?
打鍵数は、「ピャ」「ヴァ」等の一部例外を除けばですが、ローマ字と比べると少ないです。新JIS配列/月配列は日本語のかなの使用頻度に沿った配置をしていますので、外来語や擬音語が極端に多いと、ローマ字のほうが有利になるケースもあります。ただ、そのような場合はごくごく希であり、通常の使用であれば、打鍵数は少ないと言ってよいと思われます。ただ、先に述べましたように、ローマ字の方がキーを速く打つことができますので、スピードではわかりません。
親指シフトの配列と比べると……シフト方式が大きく異なるため、一概に言えませんが、親指シフトの配列の方が、打鍵数が少なくなる傾向にあります。*5
Yxは、月配列の私家版の中では、打鍵数は最悪の部類です。
もっとも、中指プレフィックスの方式上、中指プレフィックスを採用している配列同士では、打鍵数の差はほとんどありません。
各指の使用率はどんな感じ?
2-263をはじめ、月配列は、ほぼ人差し指と中指が同じぐらいで、薬指はそれより少なく、小指はもっと少ない使用率となっています。
YxとPrairialは、人差し指の使用率を抑えており、中指を一番使用します。
更にYxは、Enterキーを押す右手小指の使用率を、極端に抑えています。その分、左手の小指を使います。*6右手と左手では、左手を使います。
いずれにせよ、極端なことはありませんので安心してください。
ここで数値データを出すのをサボる……いやいやいや、私が集計に使ってるデータと他の人が集計に使ってるデータは当然のように違う物ですので、混乱させるだけじゃないですかっ。細かい数字にこだわる人は、どうぞご自分で計測ください。
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20060704#p1 ← 私の使ってるデータ
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20061226#p1 ← 上を集計した値
月配列の導入方法
WXG、及びそれに類するカスタマイズ能力の高いIMであれば、CapsLock等を使用する場合を除き、ローマ字カスタマイズだけで実装できます。これも、月配列の長所のひとつです。
Yxは、CapsLockを使いますので、窓使いの憂鬱、及びそれに類する汎用のキーカスタマイズツールを併用ください。
どうやって練習すれば良いの?
新JIS配列は、とても覚え易い配列です。
すぐ慣れます。
私にはどんな日本語入力方式が向いていますか?
どうぞ、いろいろ試してください。
Yx版の改訂の記録
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20060615#p3
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20060830#p1
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20061229#p1
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20070807#p2
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20071116#p1
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20080220#p1
http://d.hatena.ne.jp/ytqwerty/20080626#p2
今後の改良の可能性
「せ」の位置が不満なのですが、表面はぴっしり埋まっているため、悩んでいます。
月配列の他のバージョン
Uジロー様作のU8版が、2-263以外の私家版月配列の中では最もメジャーと思われます。なお、2007年末時点のUxの最新版は、U9R2です。
また、kettt様のPrairialは、kettt様が途中で飛鳥に行ってしまわれたため、開発が止まってしまっていますが、Yxが多くの影響を受けた配列です。
他にも日々改良された私家版が発表されていますので、Webを検索したり、2chの月配列スレッドを参照したりしてください。
月配列以外の独自配列
jisx6004様に感謝して、日本語入力用キーボード配列を参照のこと。
かえで様に感謝して、日本語入力用キー配列(指に宿る記憶)に関するリンク集を参照のこと。